「日本だけではなく、アジア(ASIA)のすべての方々に音楽(MUSIC)を届けたい」MISIA(ミーシャ)という日本を代表するソウルシンガーのアーティスト名にはそんな願いが込められているそうです。
最近では、プロ同市がバトルする中国の音楽番組に出場したり、ニューヨークで活躍するトランペット奏者”黒田卓也“が率いる”ソウルジャズビックバンド“とのライブ映像を公開。
これまで、あまりメディアへの露出を行ってこなかった彼女が、感染症に苦しむ世界中の人たちに”今、できること“として、映像で音楽の発信を行いました。彼女は、アーティストとしての本質を常に忘れていないのでしょう。
そんなミーシャの代表作といえば「つつみ込むように、、、」「Everything」「眠れぬ夜は君のせい」「逢いたくていま」「アイノカタチ」などが挙げられ、近年のライブでも組み込まれることが多い楽曲です。
彼女がリリースしたアルバムやライブ活動の軌跡をたどると、様々な音楽ジャンルを取りいれ、多くの人に音楽を届けたいという強い想いが込められていました。
本記事では、そんなソウルクイーン”ミーシャ”の軌跡と最近のライブでは、あまり聴くことができなくなった名曲10選をお届けしたいと思います。
「K.I.T」(1998年)
1998年のデビューアルバム『Mother Father Brother Sister』に収録されたイントロからのオープニング曲。
14曲中12曲を手掛けた”島田 聡“のトータルプロデュース力もさることながら、再生ボタンを押した瞬間、冒頭から突き抜けるようなミーシャの声量が今でも忘れられません。
雄大な演奏から、ミーシャの”売り”の一つともいえる5オクターブのホイッスルボイスを披露しています。
98年といえば、ビジュアル系バンドブームやシンセサイザーを使用したグループサウンドが主流の時代でした。
そんな音楽シーンにデビュー間もないR&Bシンガーが300万枚のアルバムセールスを記録し、ブラックミュージックをメインストリームへと導いた功績は大きい(翌年の99年には宇多田ヒカルの「First Love」が700万枚の大ヒットを産んだ)
「アツイナミダ」(2000年)
前作から約1年半振りとなるセカンドアルバム『LOVE IS THE MESSAGE』に収録。
ファンクのDJとしても活動していた”佐々木 潤”作曲の哀愁漂うナンバー。
実らなかった恋愛を歌った曲ですが、明日を生きようという女性のチカラ強さを表現した内容。キックの効いたトラックが見事にマッチしていますね。
浜崎あゆみや椎名林檎など女性シンガーの勢いが止まらなかった2000年の音楽シーンでミーシャはよりR&Bに特化した作品をリリース。
ミディアム〜スイートソウルを意識して、前作より洗礼されたアルバム『LOVE IS THE MESSAGE』は年間で4位のセールスを記録しました。
「あの夏のままで」(2001年)
サードアルバム『MARVELOUS』に収録。
ピアノ、キーボードを得意とする”山田 秀俊”作曲のミディアムナンバー。
心に深く刻まれた夏の恋をつづった楽曲。楽しかった思い出は切ない思い出だったりもしますよね、、、
この頃からチェスト(低音)~ミディアムボイスが格段に巧くなっています。
当時、大人気ドラマの主題歌となったシングル「Everything」は2000年代の女性アーティストの中で1位のセールスを記録しました。
同シングルが収録されたサードアルバムは、意外にもバラードが少なく、ヒップホップソウルを重点においた挑戦的な楽曲が並んでいます。
「恋唄」(2002年)
2002年にリリースされた4枚目となるオリジナルアルバム『KISS IN THE SKY』に収録。
B,zファンの方ならすぐにピンと来るような独特のトーン(音色)は、世界的ギタリスト”松本 孝弘”によるもの。
以前からB,zの大ファンだったというミーシャがオファーを熱望し、共演が実現したそう。
当時のB,z作品にベーシストとして参加していた”徳永 暁人”も編曲に携わっています。
「Everything」に続くバラード「眠れぬ夜は君のせい」が大ヒットとなった4枚目のアルバムはソウルだけでなく、ロックやハウスミュージックの要素を積極的に加え、彼女の表現力が最大限に活かされています。
ちなみに、このアルバムは2000年代に”違法コピーを防ぐ目的“で主流となっていた『CCCD(コピーコントロールCD)』でのリリース。
このCCCDは「一部プレーヤー機器や一部PCでは再生できない」「CDより音質が悪い」って感じで控えめにいって最悪。
音質は下がるけど、今ならぶっちゃっけ配信で十分だと思っちゃいます(^^;
「IN MY SOUL」(2004年)
ロンドン、ニューヨークなどでレコーティングされた5枚目のアルバム『MARS & ROSES』のオープニング曲。
本場アメリカの大物シンガー”ブランディ“のデビュー作など、有名アーティストの楽曲を手掛けた”キース・クラウチ”が編曲を担当しています。
旅の始まりを告げるような洗礼されたワンループにミーシャが”命の価値“を吹き込んだヒップホップソウルの名曲。
生命・愛とは何かを説いたフランスの小説”星の王子さま”にインスパイアされて作られたアルバム。
ジャズ、ハウス、ヒップホップなどを取り入れた「ネオソウル」の先駆者”エリカ・バドゥ(エリカ様)”がコーラスで参加したり、世界的に有名なプロデューサーを起用。
当時、クレジット見て「えっ?」て声でました(笑)それくらいすごい客演です、コレ!
ジャケットから楽曲、客演、プロデュースに至るまで『MARS&ROSES』がミーシャの最高傑作というファンも多いです。
しかし、セールス的に伸び悩んだこの作品も、残念ながらCCCD(コピーコントロールCD)でのリリースなんですよね、、、、
「星空の片隅で」(2004年)
前作と同じ年にリリースされた6枚目のアルバム『SINGER FOR SINGER』に収録。
様々なジャンルの有名アーティストが楽曲を提供しており、「星空の片隅で」は元チェッカーズの”藤井 フミヤ”が作詞、作曲を担当している。
黒人の音楽をベースとしてきたミーシャにとっては新境地ともいえる、少し懐かしい感じのポップミュージック。
久保田利伸を始め、GRAYやビギン、玉置浩二など様々なジャンルの有名アーティストが筆をとったコンセプトアルバム。
歌謡曲やポップス風、ボサノヴァ、ブルースなど今までのミーシャでは聴けないようなフェイク(歌い回し)が新鮮です。
黒人グルーヴのソウルフルな楽曲とは違った一面を堪能できますよ。
このアルバムからCCCDは解除されました(レンタル版はCCCDだったらしいが、、、)
「月」(2007年)
前作から2年3ヵ月ぶりとなる7枚目のオリジナルアルバム『ASCENSION』に収録。
作曲はミーシャのデビューアルバムにも携わった島田 聡が担当。
孤独な気持ちを”月”に見立てた悲しげな歌詞は”THE BOOM”のボーカリスト”宮沢 和史”によって書かれたものです。
アセンション(上昇)をテーマが示すように、様々なジャンルに挑戦した前作の延長線上に描かれたようなアルバム。
ハウスミュージックを重点に置いたダンスチューンとバラードで構成されています。
ミーシャというアーティストがより幅広い表現方法を意識したであろうキラキラしたPOPな意欲作。
「MISSING AUTUMN」(2008年)
8枚目となるオリジナルアルバム『EIGHTH WORLD』に収録。
これぞミーシャの真骨頂といえるソウルフルな歌声に、旋律なピアノの音色とキックの効いたビート。
作曲や編曲は島田 聡によるもの。どこか大人の恋を連想させる物悲しい楽曲。
デビュー10周年を記念して開催された”EIGHth WORLD THE TOUR OF MISIA 2008″より。
ピアノ、バックコーラスが最高!
この頃からボイスのキレとフェイクが尋常じゃなくレベルアップしていると感じました。
エイス(第8)のワールド(世界)というタイトルは、8枚目のオリジナルアルバムであることと、末広がりの8・無限大に幸せが広がっていくようにというイメージから。
アルバムを通してみると少し中だるみがあるものの、原点回帰ともいえるソウルフルな歌声とサウンド。
“売り”の1つであるバラードも取り揃えた、まさしく10周年に相応しいアルバムですね。
「Work It Out」(2009年)
6曲の先行シングルをひっさげた9枚目のアルバム『JUST BALLADE』に収録。
キーボードやギター、ウクレレを得意とするハワイ出身のシンガーソングライター”JP”のプロデュース。
女性の恋愛に対する気持ちをストレートに歌った珠玉のバラードナンバー。
『JUST BALLADE』というタイトル通り、ピアノやキーボード、オーケストラアレンジを中心に制作されたバラードアルバム。
当時、注目されていたのはドラマや映画のテーマソングだった「逢いたくていまライブ」や「約束の翼」などのシングル曲ですが、「約束の翼」のカップリングで収録されていた「So Beautiful」というバラードもオススメです。
「明日へ」(2011年)
記念すべき10枚目のオリジナルアルバム『SOUL QUEST』に収録。
この曲は2011年3月11日、東日本大震災の復興応援メッセージソングとして制作されました。
明日へ向かうために”今”を精一杯生きることの大切さを気付かせてくれた思い入れのある一曲です。
名曲「Everything」にも携わった”松本 俊明”のピアノ伴奏とミーシャの歌声が心に響きます。
文字通り”魂の探求“がテーマとなった『SOUL QUEST』は、尊敬するマイクロフォンペイジャーのラッパー”MURO”を客演に迎えたり、デビューアルバムのオープニング曲「K.I.T」の流れを思わせる「This Is Me」などミーシャの原点であるソウルミュージックを軸にした作品。
苦難や葛藤を愚直に表現したリリックが琴線に触れる大人のR&Bです。
まとめ
今回は、ミーシャのデビュー作から10作目(1998年~2011年)までの軌跡をたどってみました。
5オクターブの歌声が魅力のパワフルでエネルギッシュなR&Bシンガーとしてデビューしたミーシャは、ジャズやロック、ハウスミュージックから歌謡曲まで様々な音楽を吸収し、今や日本が世界に誇る歌姫です。
改めて作品を並べてみると、一緒に居ることの嬉しさや純粋な恋心を歌っていた初期の作品から離れていても繋がっていることの大切さを表現するようになったり、気持ち的にも大人になっていることを実感しました。
ミーシャが『SOUL QUEST』をリリースした2011年。
東日本大震災の津波によって、日常が一瞬で奪われていく光景は9年たった今でも脳裏に焼き付いて離れません。
ただその場で立ち尽くすことしかできない無力さと、底知れぬ恐怖心に飲み込まれそうになりました。
ミーシャの「明日へ」という楽曲を聴いた時、単純かもしれませんが生きる希望が湧いてきました。
今、できることをやろうと前向きになれたのです。
コロナウイルスで多くの人が苦しんで希望を失いかけている今、彼女は真っ先に中国に歌を届けました。
そして、すべての人たちに音楽を通じて「スマイル」を届けようというプロジェクトも行っています。
「その痛みを知ること、あなたの笑顔を見ること そのことが「答え」だと心から思うの」
「明日へ」の歌詞の一文です。
コロナウイルスの本当の怖さは、命を奪うだけでなく、信頼をも奪ってしまうところ。
どうかミーシャが、音楽が、”アナタ“の指針となりますように。Peace.
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